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2009年03月13日 12時 [機械研究調査報告]

工藤一郎国際特許事務所

特許力からみた業界分析 --機械業界 【特許力指数ランキング、トップはパチンコ機メーカーSANKYO】

工藤一郎国際特許事務所は、特許価値を評価するための特許価値評価手法(YKS手法)を用いたサービスを提供している。今回はそのYKS手法を用いて、特許力の面から見た機械業界についての分析を試みる。


工藤一郎国際特許事務所では、特許の経済的価値を客観的に評価する手法としてYKS手法を用いたサービスを提供している。YKS手法により算出される特許力指数(YK値)は、いわば特許がお金を稼ぐ力を指数化したものであり、各企業の特許による競争力を指数で示したものだ。

東証一部上場企業の機械業界における特許力指数ランキングベスト10は次のようになった。

【機械業界の特許力指数ランキング】
     企業名              YK値    業界内YK偏差値
1位 SANKYO              7554.21    123.98
2位 クボタ                4288.12    90.01
3位 平和                4167.53    88.76
4位 三菱重工業            3188.89    78.58
5位 荏原                2418.61    70.57
6位 セガサミーホールディングス  2363.24    69.99
7位 栗田工業              2194.22    68.23
8位 ダイキン工業           2111.78    67.38
9位 ジェイテクト             1382.57    59.79
10位井関農機              1156.88     57.45
(算出基準日:2009年2月1日)

機械業界の特許力指数ランキングではパチンコ機メーカーのSANKYOがトップに立った。2位以下には、農業機械などを手がけるクボタ、同じくパチンコ機メーカーの平和などが続いた。
本ランキングでは、トップのSANKYOをはじめ、平和、セガサミーホールディングスなど、遊戯機械メーカーの特許力の強さが浮き彫りとなった。これは、遊戯機械業界内で激しい知的財産の競争が起こっていることを示している。

また、そもそもYK値とはその性質上、競合する企業間の相対的な位置関係の把握に有効な指標であることから、以下のように競合すると想定される企業群別にランキングを行った。

遊戯機械 (YK値)
1位 SANKYO (7554.21)
2位 平和 (4167.53)
3位 セガサミーホールディングス (2363.24)

建設機械・農業機械等 (YK値)
1位 クボタ (4288.12)
2位 井関農機 (1156.88)
3位 コマツ (1040.09)

水処理・プラント等 (YK値)
1位 荏原 (2418.61)
2位 栗田工業 (2194.22)
3位 オルガノ (1142.27)

総合重機 (YK値)
1位 三菱重工業 (3188.89)
2位 住友重機械工業 (1031.85)
3位 日立造船 (433.09)

以上は機械業界をさらに細分化したセグメント別に分類したものである。一口に機械業界といってもその業種は多岐にわたっており、単純にすべての企業を比較するよりも、各セグメントに分けて比較したほうがより効果的に各企業を分析できる。ここでの分類はおおまかなものであり、各企業の主力事業を基準に分類を行った。

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個別特許ランキング
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次に、機械業界の各セグメントにおいて最も価値の高い特許を抽出した。

【各セグメントにおける特許力指数トップの特許】
                 発明の名称【企業名】
遊戯機械1位         ゲーム装置【セガサミーホールディングス】
産業機械1位         ギヤシェーパ加工方法及びギヤシェーパ【三菱重工業】
建設機械・農業機械1位  水田作業機【クボタ】
水処理・プラント等1位   非晶質シリコン太陽電池【三菱重工業】

遊戯機械1位はセガサミーホールディングスの特許であった。この特許は、遊技者のストレスを増加させることなく複雑なゲーム操作でも簡単に把握することができるゲーム装置の発明である。この発明では、遊技者の操作信号を表示する手段を備えており、遊技者は自己の操作を確認することができる。このため、遊技者に余分なストレスを与えることなく、複雑なゲーム操作でも比較的簡単に把握できるようになっている。

産業機械1位の特許は三菱重工業のものである。この特許は、高価な超硬製の歯車形削り工具を用いることなく、切削速度を大幅に向上させることができるギヤシェーパによる歯車加工方法を提供することを目的としている。これにより、コストの上昇を避けつつ、高能率なドライカット歯車形削り加工を実現することができる。

建設機械・農業機械1位は、クボタの水田作業機に関する特許である。この特許では、水田作業機において、単純な操作で作業装置の昇降が行えるという良好な面を損なうことなく、誤操作を抑えながら作業装置の昇降が確実に行えるようにし、さらに作業装置に動力を伝達するクラッチ機構の入り操作の操作性を良いものにしている。

水処理・プラント等1位は、三菱重工業の特許で、太陽電池に関する発明である。この特許は、シリコン層の欠陥密度を一定未満にすることにより、生産性を低下させることなく初期効率を高め、同時に高い安定化効率が得られるような太陽電池を提供することを目的としている。

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各社の特許戦略
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今度は視点を変えて、各社の特許戦略の効率性を見比べてみることにする。
以下のランキングは、機械業界各企業のYK値を各々の保有特許数で割ったものである。

遊戯機械 (YK値/保有特許数)
1位 平和 (5.13)
2位 SANKYO (4.62)
3位 セガサミーホールディングス (2.70)

建設機械・農業機械等 (YK値/保有特許数)
1位 クボタ (0.90)
2位 コマツ (0.60)
3位 井関農機 (0.38)

水処理・プラント等 (YK値/保有特許数)
1位 オルガノ (1.76)
2位 栗田工業 (1.53)
3位 荏原 (1.11)

総合重機 (YK値/保有特許数)
1位 住友重機械工業 (0.61)
2位 日立造船 (0.52)
3位 三菱重工業 (0.50)

このランキングは、少ない特許保有数で高いYK値を獲得した企業のランキングで、この値の高い企業は無駄な特許が少ない効率的な特許戦略を行っている企業といえる。
特許の申請や維持には多額の資金が必要となるため、効率的な特許戦略を行うことは企業にとって非常に重要であり、このような観点から企業を分析するのもまた有力な手段のひとつであるといえるだろう。

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機械業界におけるYK値と利益率との関係
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ここではまず、機械業界のYK値上位企業とYK値下位企業のROE(株主資本利益率)を見比べてみた。ROEとは、どれだけ株主資本を効率的に利用して利益を稼ぎ出しているかを見る経済指標で、投資などの際に最重要視される指標の一つである。

連結ROE
YK値上位30社平均 【10.80】
YK値下位30社平均 【8.88】
東証一部上場124社平均 【9.30】

機械業界でのYK値上位30社は、東証一部上場企業124社の平均ROEを上回っている。一方で、下位30社では平均を下回っていることがわかる。

次に、付加価値といった点に着目して、社員1人当たり経常利益を見てみよう。

社員1人当たり経常利益(単位:万円)
YK値上位10社平均 【10,648】
YK値上位30社平均 【5,793】
東証一部上場124社平均 【3,919】

ここでも、特許力上位企業の利益率の良さが際立つ。なぜこのように特許力が高い企業の利益率がいいのかというと、製品に付加価値をつけるためには技術力が大きく関わってくるからである。当然ながら、より付加価値の高い製品を作れる企業のほうが利益率が高くなる。近年重視される利益率という点では、技術力が大きなカギを握っているのである。

日本の機械企業においては、製品の付加価値を高めるそれらの技術力は非常に重要な経営資源である。高い特許力・技術力を持った企業がより優位に事業を進められるのは間違いなく、企業が競争力を高め、企業価値を向上させるためには、優れた特許戦略を行っていかなければならないのである。

以上の分析により、機械業界における特許力の重要性がお分かり頂けたかと思う。今回の分析は現時点での機械業界各社の知的資産の現状を比較した点で、また、機械業界における特許力の重要性を明らかにしたという点で、非常に重要な分析であるといえるだろう。機械業界においては特許戦略が各社の成長のカギを握っているといえ、今後もその動向に注目していきたい。


【本件に関するお問い合わせ先】
工藤一郎国際特許事務所
担当:小林
電話:03-3216-3770
E-mail:Office@kudopatent.com




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